私は虫取り活動の一環として、町の緑化運動を推進している。
無計画な森林伐採によって残された禿げ山では、
昆虫たちは生きていけない。
緑がなくなれば、虫がいなくなり、
虫取り人である私は、おまんまの食い上げ
あるいは豆粥のお預けだ。
それだけではない。
地球上から虫がいなくなり
生態系や食物連鎖のバランスが崩壊すると、
人類は予想だにしなかった深刻な事態に追い込まれるのだ。
一例を挙げよう。
昆虫がいなくなると、虫を主食としていた鳥が餓える。
餓えた鳥たちは生ゴミを求めて早朝の新宿に集結する。
カラスだけではない。
文鳥からジュウシマツ、セキセイインコまで
ありとあらゆる鳥が都庁上空を旋回するのだ。
色鮮やかな鳥たちの航空ショーは
新たな東京名物となることだろう。
そうなると、従来の観光名所である
浅草の雷門やアサヒビール本社のへんなオブジェは根こそぎ観光客を奪われ、
周辺の土産物屋は、おまんまの食い上げ、
あるいはボンゴレの裾上げになってしまう。
とにかく、虫及び鳥たちのために、緑を絶やすわけにはいかない。
そこで私は電車を利用する際、
各駅のホームにめかぶを植樹することにしている。
私が植えためかぶが梅雨の湿りで成長し、
やがて都内の地下鉄はワカメの緑で覆い尽くされることだろう。
際限なく増えたワカメが線路を塞ぎ、電車を止めて
多額の賠償金を請求されることになったら、
私は全力でしらを切り通すつもりだ。
海の幸と山の幸が共生する理想郷の誕生を心待ちにしつつ、
今日はこの辺で横になることにする。