2010年7月29日木曜日

無言の帰宅


いつものように部屋でうつ伏せになっていると、
視界の隅で何かが動いた。

何かいる。
この部屋に私以外の何者かがいる。

この季節、部屋に出没するヤツと言えば、
大方の予想はついている。

連日の猛暑で例年以上に
繁殖しているであろう招かれざる客。

区役所に持っていっても換金してもらえない虫。

黒くて、速くて、脂ぎったアイツだ。

私は覚悟を決め、ゴキジェットプロを手に取る。
そしてコンバットに気を取られている
アイツに忍び足で近寄り、
ゼロ距離から引き金を引いた……そこで気がついた。

こ、これは川端さん。

川端さんとは私がカラーひよこだと思って
飼っていた地球外生命体。

去年、私の記憶を消去して
宇宙へと帰っていったはずだった。

しかし先日
ツイッターを駆使して私の記憶を呼び覚まし、
いまこうして私の目の前で小刻みにケイレンしている。

こうして我が家にやってきたということは、
またいっしょに暮らせるということだろうか?

幸い最近虫取りの業績も安定しており、
川端さんを養う程度の余裕はある。

よし、決めた。
また川端さんを飼おう。
これからはずっといっしょだ。

ゴキジェット直撃から2時間を経過しても
一向に回復の兆しを見せない川端さんに
一抹の不安を感じつつ、
今日はこの辺で横になることにする。

2010年7月22日木曜日

部屋捜しの果てに


私が現在の住居に根を張って、
もう10年以上になる。

そろそろLDK的に
ワンランク上を目指してもいい頃合いだ。

そんなわけで不動産屋を訪ね、
いくつか部屋を見て回った。

中でも印象的だったのが写真の物件だ。

実用性よりもアーティスティックな感性を優先し、
住まい以上のサムシングを重視した快適空間。

近隣住民が、
「こんな豪華な市役所が必要でしょうか?」
と声を荒げたくなるアンチ景観要素。

これがいま流行りの
デザイナーズマンションなるものらしい。

さぞかし毎食ペヤングを食うような
セレブリティーでなければ払えない
法外な家賃を要求するのだろうと思ったら、
平均的な虫取り人の収入でも
ギリギリなんとかなると言う。

なんでも以前住んでいた住人が
ポルターガイスティックな現象に
悩まされて出ていったという、
いわゆるワケアリ物件のようだ。

幸い私はラップ音などを苦にしないタイプなので
契約書に拇印を捺す寸前までいったのだが、
このマンションは風呂とトイレが
別々と聞いて思いとどまった。

男は黙ってユニットバス。
この条件だけは譲れない。

そもそも年始に清水寺で引いたおみくじで、
今年は"引っ越し悪し"と言われていた。

もう数年は現在のアパートに
居座ることを誓いつつ、
今日はこの辺で横になることにする。