私がゴールデンウィークに帰省するタイミングに合わせ、
毎年訪ねてくる骨董屋がいる。
彼の狙いは写真の人形だ。
これはデンマークの著名なデザイナー
ツォーマス・ジャン・モルステインが、
郵便局で粗品として配られる貯金箱のデザインをする片手間に
作ったと言われる五月人形だ。
彼ならではのモードでソリッドなイメージと
誤った日本観をふんだんに織り込んだ業物で、
世界に4000万体しか存在しない。
後にツォーマスはアメリカに渡り
スタンダップコメディの第一人者として名を上げたため、
彼の熱狂的なファンのあいだで高値で取り引きされているのだ。
だが私にとって、この五月人形は父の形見。
私が子どものころ……と言っても中学3年生のころ、
酔っぱらった父が近所のバザーにフラッと立ち寄り
息子のためにと2000円で購入してきた物である。
もう五月人形という歳でもない息子への無駄な出費ということで
母の怒りを買い、離婚寸前の騒動に発展したことも、
いまとなっては懐かしい思い出だ。
父は数年前、山で虫取り中、スズメバチに追いかけられて
逃走したまま行方不明中。
この五月人形は、そんな父と私を結ぶ大切な絆。
骨董屋は「6800円で売ってくれないか」と交渉してきたが、
そんな端金で譲るわけにはいかない。
売値が7000円の大台に乗ったとき、
もう一度改めて考えることにしたい。
ツォーマスの今後の活躍と父の無事を祈りつつ、
今日はこの辺で横になることにする。
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