2013年3月18日月曜日

サービス終了目前の切断


川端さんが、またやった。

なんだか10円玉を擦り合わせるような
嫌な音がするなとは思っていたのだが、
どうせまた、隣人が新歓コンパで披露する
余興の練習でもしているのだろうと、気にも止めないでいた。

そして音が鳴り始めて15分ほどした後、
私が日課のダイヤルQ2遊びをしようとしたところで
異変に気がついた。

音の主は川端さんだった。

なんと電話のケーブルを食いちぎり、
ギリギリと唸りながら咀嚼している。

なんということだ。

川端さんはこれまでにも
時価数100万相当のオオクワガタを捕食したり、
ばい菌がたくさん付着したドアノブを舐めたりしてきた。

その度に厳しく躾てきたつもりだ。

しかし思いは通じていなかった。

電話というのは、万が一の時に
私と医療機関を結ぶホットライン。

その唯一の連絡手段を絶たれたいま、
ナッツ邸は完全なる陸の孤島と化した。

「もしもし! もしもし!」

私は受話器を取り、一縷の望みを胸にまくしたてた。

しかし聞こえるのは川端さんの低い息づかいのみ……

と思いきや、何やら人の声が聞こえる。
これは……ロシア語だ。

どうやら川端さんの遺伝子に組み込まれた
モバイルルーター的なサムシングが混線し、
シベリアの短波的な周波数とシンクロすることに成功したようだ。

万が一の災害時、頼りになるのはやはりラジオだ。

電話という代償を支払っても、
なお余りある天からの贈り物と言っていいだろう。

その後、4時間ほど川端さんの鼻を捻るなどして周波数を調整し、
『荒川強啓 デイ・キャッチ!』を受信しようと試みたが、
けっきょく聞こえてきたのはロシアの言語だけだった。

ツンドラの紅き煮込みスープに思いを馳せながら、
今日はこの辺で横になることにする。

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