聖なる夜に奇跡が起きた。 (サンタ)クロースの粋な計らいが 呪術的な力となって世田谷の一角に降り注ぎ、 ニューヨーク東8番街以来のミラクルクリスマス、 俗に言うミラスマス、もっと言うなら ミル・マスカラスが降臨したのだ。 一昨日から色づき始めた私の体は 今朝未明に完全な真紅となり、 体の内側からミニスカサンタへと変貌を遂げた。 無職の私だが、今日だけは 子供たちにプレゼントを届けるという 立派な仕事が待っている。 今夜は忙しくなりそうだ。 コクワガタが引くソリに乗って住宅街を徘徊し、 玄関先に子供用自転車が置いてある家を発見次第 片っ端からセミの死骸を投げ入れるのだ。 クリスマスというイベントに疎外感を感じ、 息を潜めてジッと26日が来るのを待った 去年までの私はもういない。 紅に染まった私を慰めるヤツも、もういない。 そもそも慰めてもらう必要がない。 紅に染まることで、 私は完全にクリスマスの一部となったのだ。 すべての仕事を終えたら、日の出と共に 私の体は紅から元のネズミ色に戻るのだろう。 そのときは充実感に満ちた後頭部に ご来光を浴びながら横になることにする。
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