捕まえた虫を売りに編集部を訪れると、
何やら人だかりができている。
聞けば、北海道有数のジゴロと呼ばれる男が来ているらしい。
こんな機会は滅多にないので、
思い切って話しかけてみることにした。
恐る恐る正面に回り込み、
「最近どうですか?」と声をかけると
「ああ、モテるよ」。
予想だにしない答えだ。
初対面の人間に対する第一声が
「モテるよ」などということは、
人類の歴史を振り返っても例がないことだ。
しかし、ここで怯んではいられない。
私もモテたいのだ。
「どうすればモテますかね?」
核心に迫る質問を投げかける。
すると北海道有数のジゴロは、
「二重人格になればいい。
そうすれば、そのうちなびいてくる。簡単ですよ」。
いやはや勉強になる。
と、ここでひとりの編集者が烈火の如く怒りながら
北海道有数のジゴロに詰め寄り始めた。
どうやら、過去に何らかの男女間トラブルがあったらしい。
ここでも北海道有数のジゴロは、
「オマエが気に入った女が、たまたまオレの彼女だっただけだ」
と、涼しい顔で受け流す。
さすがと言うしかない。
早朝の山に生きる虫取り人と、夜の街に生きるジゴロ。
虫と女と、狩るものは異なれど、同じ狩人だ。
彼には、今後もことあるごとに話を聞いていきたい。
モテるって、どんな気分なのだろう?
そんなことを考えながら、今日はこの辺で横になることにする。
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