いつものように虫取りに向かう途中、 緑の男に出会った。 ちょっと尋常ではない緑色だ。 こういうヤツとは関わらないのがいちばん。 私は伏し目がちに小走りで緑の男の横を 通り過ぎようとした。 「待テヨ」。 緑色の腕が私の行く手を遮る。 「定額キューフ金アルンダロ? 出セヨ」 どうやら通りがかった人から通行料をせしめようという 悪質な輩のようだ。 弱い者を威圧し、かけがえのないマネーを奪う。 私はこういう輩がいちばん嫌いだ。許せない! 「い、いくらですか?」 私は震える声で答えた。 「全部ニ決マッテンダロ!」 私は肌身離さず持ち歩いている 定額給付金の入った茶封筒を差しだし、 逃げるようにその場を離れた。 走る。全力で走る。 しかしそのとき、私の口元には笑みがこぼれていた。 緑の男は茶封筒の中に 定額給付金が全額入っていると思っているだろう。 しかし私は、こんなこともあろうかと 定額給付金を分散させておいたのだ。 右の靴に10円、左の靴に10円。 私の手元には合計20円が残った。 これはもはや完全勝利と言っていいだろう。 緑の男が地団駄踏んで悔しがる姿を想像しつつ、 今日はこの辺で横になることにする。 ●残りの定額給付金…………20円
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