生死の境を彷徨いだして3日目。 今日は小学生のころの記憶が 走馬燈となって前額部の裏側に投影された。 小学3年生のとき、私は初めて 父の職場である山へ連れていかれた。 当時の私の体力を考慮して、 ロープウェーによる入山。 思えばこれが虫取り人への第1歩であった。 流麗な体捌きで樹液を塗り、ハチを避け、 コクワを獲る父。 その姿は幼き私の目にはあまりにも眩しく シャイニングしていた。 そんな父も、いまや行方不明で、 どこにいるのか 生きているのかどうかもわからない。 このまま私が最悪のフィナーレを 迎えるようなことになれば、 ナッツ家の家系はここで途絶えてしまう。 あの日、虫取り人を志して以来、 山で死ねるなら本望と思ってきた。 しかし、まさかシーズンオフに四畳半で……。 輝いていた日々と現状とのコントラストに 腸をしめつけられながら、 明日の走馬燈まで横になることにする。
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