皆さんは街で銭湯の煙突を見かけたとき、 どのような印象を受けるだろうか? その勇壮なフォルムに胸躍ったり、 サンタクロースを連想して多幸感に包まれるのだろうか? 私にとって煙突は、 忌まわしき長き憎しみの象徴だ。 昔ながらの虫取り人は 木に登って虫を捕ることを求められていたため、 幼いころから高所に慣れ親しむ必要があった。 そこで、虫取り人の家では後継ぎが生まれると、 赤子を背負って煙突の頂上まで登り、 恐怖心を取り払う儀式が行われていたのだ。 私に関して言えば、この儀式は完全に裏目に出た。 物心つくまえだったので 煙突の頂上で泣き叫んだ記憶は判然としない。 しかし、私の深層心理には決して拭うことのできない トラウマが刻み込まれてしまったのだ。 これは、人間が爬虫類を怖がるのは 深層心理に恐竜に対する恐れが 刻まれているからとする奇説と 同様の原理だと思っていただければ間違いない。 高いところも爬虫類も苦手な私だが、 だからこそ木の根っこ部分に 樹液トラップを仕掛ける高等テクニックを 開発できたという自負がある。 高所恐怖症でも立派な虫取り人になれるのだ。 未来の我が子のためにも、 悪しき習慣は私の代で断ち切る。 そんな思いで鼻の奥をツーンとさせながら、 今日はこの辺で横になることにする。
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